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土壁・左官の仕事と技術
 このところ穏やかな良いお天気が続きますね。京都御所など名所の一般公開も多いので、この週末はお出かけを楽しまれる方も多いのではないでしょうか。
 建築に携わっていると、美術品などを鑑賞するつもりが、建物の方に気を取られてしまって、何も無い壁を見て立ち止まったりたりすることがあります(苦笑)。左官は苦労しただろうなとか…特にこの本を読んでからは京都をスタスタ歩けません。
 『土壁・左官の仕事と技術』は京都で代々続けて名建築を仕上げてきた左官職人による本です。職人技や知恵は、文字上に書き表すのは大変なことで、比較的図解しやすい建築技術でも、基本の部分しか紹介されていません。皆現場で体得するのです。まして、図に表しにくい壁土のこと等、まず文字化しにくいし、壁土の刻々と変わってゆく状態など、書いても伝わらない部分が多いと、初めから諦めてしまうのが普通でしょう。今しか書き残せない技術を著してくださった、この本の著者と出版社に本当に感謝するほかありません。専門書ですが、建築に関心を持たれている方なら、一般の方でも面白いのではないかと思います。

◎目次を紹介します。
 (大見出しだけでは解りにくいので一部は小見出しまで引用します。)
 参照:学芸出版社《土壁・左官の仕事と技術》

一章 壁塗の歴史
  『左官』の由来
  伝承の見えない壁
  塗壁の移り変わり
   壁塗のはじまり/壁下地の導入/大陸からの技術/
   住居土壁から城郭白壁をへて、数寄屋土壁へ/茶の湯の流行/
   ポルトランドセメントの登場/そして現代へ
  塗壁から見た地域差
   消えゆく各地の工法/土地に産する材料を使って
  京都と各地の壁巡り
二章 左官仕事と道具・材料
三章 塗壁工法の下地・仕上
四章 実務工程
五章 数寄屋壁と土蔵
六章 職人の矜持

  京都左官仲ヶ間組
   仲ヶ間誓約書/仲ヶ間掟書/仲ヶ間値段書/御得意先名前帳/
   明治の左官
  技は一生の修業から
   材料づくりの難しさ/徒弟修業再考/戦前の徒弟制度/徒弟の一日
  京壁と茶の湯
   茶室の壁/格式と場所
  職人の気構え
   職人衆への願い/若き職人育成のために/出入方制度/
   信頼が生む仕事/職人の責務
  壁は聞いて読んで観て学べ

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author:seiki, category:おすすめ本や催し, 13:02
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京の大工棟梁と七人の職人衆
 雨の日曜日は、大切な本を読み返すのにまたとない日。この本は、職人への聞き書きをまとめたものなのですが、よくぞこうやって残してくださったものと、著者の笠井一子さんに感謝します。本の冒頭は数寄屋大工の、故 中村外二棟梁のお話から始まり、淡々とした中に深みのある語りに加えて、90歳近くまで活躍された中村さんご自身や、倉庫(銘木の宝庫)の写真もあります。もちろん他の職人衆の言葉も溜息の出るような貴重な内容で、この地味な本の作りでは勿体無いような気がするぐらいですが、質実剛健で職人の世界を伝えるには丁度良いのかもしれません。
 中村外二棟梁の語りの章に『建築とは施主の運命を伸ばすこと』という節があり、「一言でいうと、建物によって住む人の人柄や運命が決まるとわしは思う。そやで責任がありますわ。家を建てているときは、その施主の全盛期ですから一番いい時でしょ。力があるときやもん。それをいかにしてそれ以上に伸ばすか。ということは、これはある程度、われわれ大工の責任やと、そう思うておつきあいをしたり仕事をやったりしとるんやけどね、どうやろ。」とのこと、忘れてはならないことですね。語り方がまた面白く、笠井一子さんに、「こっちは70年も80年も苦労しとんねやもん。それをあんた、一時間や二時間で白状せえ、というのはちょっと無理やと思うけど。」という具合に、次から次へと本音の話が続いてゆきます。他に類のない面白さですよ。


 詳しい内容紹介のあるサイト:松岡正剛の千夜千冊「京の大工棟梁と七人の職人衆」

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author:seiki, category:おすすめ本や催し, 18:15
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五重塔(幸田露伴原作)
 長く続いた酷暑から、一転して肌寒さを感じる様になり、なんだか予想のつかない天候に驚きますね。読書の秋到来で、ふと腕はあるが世渡りの不器用な大工を主人公とした「五重塔」(幸田露伴原作)のことを思い出しました。たしかラジオで聴いたことがあったのですが、一度じっくり読んでみたいと思って検索してみたら、ちょうどまた今月、NHKラジオ第2放送で朗読が放送されていて、今週で終わるようです。残念ながら時間帯が午前10:45〜午前11:00で、仕事中…。ぜひ夜か休日に再放送してほしいものですが、本は岩波書店など数社から出版されていて、CDは新潮社から日下武史さんの朗読で出ていました。
 この名作のモデルとなった五重塔は、東京の谷中天王寺に実在し、関東大震災や戦災にも無事だったらしいのですが、昭和30年代に惜しくも、心中事件による火災で焼失したとのこと、なんだか無常観まで感じさせるような物語です。再建を望む声もかなりあるそうですが、具体化はまだのようです。主人公の「のっそり十兵衛」なら、何があろうとまた黙々と再建に取り組むことだろうなと思います。

五重塔 (岩波文庫)
五重塔 (新潮CD)日下武史朗読
 
五重塔


【朗読の放送日程:NHKラジオ第2放送】
午前10:45〜午前11:00 朗読:嵐圭史
9月 27日 (月) − 幸田露伴作品集 −(11)
9月 28日 (火) − 幸田露伴作品集 −(12)
9月 29日 (水) − 幸田露伴作品集 −(13)
9月 30日 (木) − 幸田露伴作品集 −(14)
10月 1日 (金) − 幸田露伴作品集 −(15)

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author:seiki, category:おすすめ本や催し, 16:37
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田中文男棟梁の言葉
 今月初めに、宮大工の田中文男棟梁の訃報を新聞で知り、驚きました。文化財の保存などに尽力され、住宅にも注力されるなど幅広い活躍と、体験から編み出された数々の名言で知られていました。含蓄のある言葉が多数ありますが、3つだけ紹介します。

「暮らしは下を見て、仕事は上を見てしろ」

「大工は、日常生活でも試験されるんです。住宅が竣工してお客さんに引き渡したら、その仕事は一応、終わったことになる。でもその住宅でお客さんが生活を始めたら、それからは、毎日、毎日、仕事の質が試されるから」

「職人として一番勉強になるのは住宅」

『しっかり仕事をせい!』と、太い声で言われているようなものですね。言葉は目標として心に抱いている人が多いでしょうし、物造りの現場でコツコツ実践しておられる方もまだ各地におられますが、自ら現場を率いて実践し、古建築の研究も深めて、講演もこなし記録も残す、これは誰にも真似のできない事。木造建築に携わるなら一度は読んでおきたい、田中棟梁の本がINAX出版から出ています。
 


 田中文男棟梁のご冥福を、心からお祈りします。

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author:seiki, category:おすすめ本や催し, 15:44
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木のいのち木のこころ
木のいのち
木のいのち木のこころ―天・地・人 (新潮文庫)

 入院中に少しずつ読み始めた『木のいのち木のこころ』は、天・地・人それぞれの単行本だったものを1冊に集めた文庫本で、約500ページと少々分厚いが、手軽に持ち歩ける大きさになっているのが有り難い。「天」が法隆寺の宮大工棟梁、西岡常一氏の話、「地」がその直弟子の小川三夫氏の話、そして「人」は、現在、小川さんが率いておられる、鵤工舎(いかるがこうしゃ)という宮大工集団の若い人の話で、それぞれ塩野米松氏の聞き書きで収録されている。
 宮大工修行の事や、木造建築の事を淡々と話しているだけなのにどのページを開いても、その話の中に引き込まれて、一緒に現場にいるような錯覚をおこしてしまう。聞き手の塩野氏のおかげで、何百年と伝えられてきた、法隆寺宮大工の仕事の一端が伝わってくる。建築の話なのだが、本来ならどの仕事にも通ずるようなことを含んでいて、結局は人の生き方を語っている。一滴の水から始まる大自然の恵みが大木となり、研ぎから始まる技術の積み重ねが、木を生かして見事な大伽藍を造営する。一通り読んでからも、そばに置いて時々見直すと、気持ちが大きくなるような、そういう本である。

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author:kura, category:おすすめ本や催し, 11:17
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